
MORRIS WH-20 ハミングバードモデルを買った話
「モーリス持てばスーパースターも夢じゃない!」のCMで一世を風靡した、モーリスギターをオークションで落札しました。
ちなみに上記のCMはくまおさんは知りません。日本のフォークブームの際に有名だったCMとのこと。
すでにモーリスのアコギは2台持っているのですが、デザインの違うものが欲しく探していました。先日、Bunnyのモッキンバードhideモデルを売ったお金が軍資金です。その軍資金で欲しいアコギが3本あるのですが、その1本目です。
別にモーリスに限定していたわけではなく、ギブソンのハミングバードという形のギターが欲しかったのです。本物は30万円くらいするので簡単には買えません。そこでそのコピーモデルを探していたわけです。
じゃん!
品番はWH-20。HはハミングバードのHだと思います。そして20という数字は当時の定価を表しています。詳細な製造年がわからなかったのですがおそらく1970年代後半のギターです。定価2万円の合板ギターです。
この頃は日本のギター会社は著作権侵害しまくりで、マーティンやギブソン、フェンダーのギターをコピーしまくっていました。そう、今でこそ中国の専売特許ですが、かつては日本こそがパクリ大国だったわけですね。
今回はなんだかんだで大体1万円くらいで手に入りました。
定価の安いギターなので当然合板なのですが、ハミングバードという事で素材はサイド・バックはマホガニーです。くまおさんは同時期のモーリスW-20も持っており、それと比較するとおそらく同じ作りです。ネックとヘッドだけ違うものをセッティングして生産していたのだと思います。
※その後調べたところ、WH-20はマホガニーではなくサイド・バックはトーグという木材でした。フィリピンローズウッドと呼ばれるそうですが、正確にはロースウッドの一種ではないとの事。ネックはナトーでこちらはマホガニーの代用で利用される安価材。
上位モデルのWH-30にはサイド・バックにマホガニー合板が使われているようです。それだけで定価が1万円も違うのですがそんなに違うかな?1.5倍ですからね・・・。
でも、木目はローズウッドぽくないんだよな~。マホガニーっぽいのですが、全部ナトーなんじゃない?よくわかりません。まあ何でもいいです。
参考までに写真左がW-20。ちなみに右はモーリスMD-505です。サイド、バックはローズウッド(だと思う)です。
届いたWH-20の状態は・・・良くないね・・・。オークションの説明では、大きな傷はなく問題なく弾ける&弾きやすいと書いてありましたが、ペグは何度も付け替えた跡がありネジ穴は複数開いているし、ボディには大きな傷があるし、指板は浮いてるし(※後ほど詳細をかきます)。やはりオークションだと外れもあるよな〜と言う感じ。
初心者がオークションでギターを購入するのはリスキーだよな〜と再確認しました。くまおさんは初心者ではないのでまあいいです。
でもくまおさんがオークションでこの個体を買ったのには理由があります。ハミングバードを探していたくまおさんは、近所にある中古ギター屋さんへ行ってきました。そこでチェリーサンバーストのハミングバードは無いかを尋ねたところ、入ってきてもすぐに売れてしまうとのことで、在庫はありませんでした。修理中のトムソンのDOVEがあると言われたのですが、トムソンか〜と言うのもあり、修理費がかさむので1万5千円は超えちゃうかもと言われ、そこまでの金額を中古のトムソンに払うのもなんだか嫌だな〜などと感じたのです。そこで、オークションには度々出品されるモーリスのハミングバードに目をつけたという訳。
この写真は磨き終わった後のものです。まあ40年以上前のギターですから打痕や塗装剥がれは仕方がありません。よく見ると、トラスロッドカバーとか曲がってね?磨いたけれどもヘッドのインレイやロゴ付近白濁は取れませんでした。まあこれはこれで、経年変化の迫力です、70年代〜80年代の日本製ギターは精度が高いとか言ってたやつ誰だよ〜ロットカバーだけじゃなく、ペグの位置もゆがんでるよね・・・平行に穴が空いていないと思う。少し調べたところ、WH-20は他の個体も斜めに付いている模様。仕様なのかな?
ホール内ラベルのサインが「Iwai」となっています。ネット情報によると寺田楽器製だと推測されます。寺田楽器も大したことねえな〜(笑)
もう今となっては実現できないギブソンヘッドです。ギブソン社は、躊躇なくパクりまくるフェルナンデスにしびれを切らして訴訟を起こした結果、ギブソンヘッドのコピーは使用が禁止されたため、それ以降はギブソンヘッドが生産できなくなります。だからこそ堂々とパクっている、この時代のギブソンコピーモデルは貴重です。クラウンロゴもバッチリパクってますね。(マニアにとっては)
かなりマニアックな話ですが、このWH-20は1970年代の楽器です。当時のギブソンを忠実にパクっています。ですからポジションマークの形が現行品のハミングバードとは異なるのです。現行品は平行四辺形が2つ並んでいるタイプ。しかしこのWH-20は長方形です。
こちらは1978年製の本物。
こちらは1976年ギブソンハミングバード。
ほら、長方形でしょ?その当時の仕様をしっかりとパクっているわけですよ。
こちらが現行品です。
更に細かいことを言うならば・・・ネックヒールの形も70年代仕様です。
現行品はかまぼこ型。そして70年代の物は鋭角タイプ。
WH-20も鋭角です。
ピックガードは本物に比べて小さいですね?ここまで真似しているのになぜだろう・・・?
でね・・・ペグがだめなのよ。この手のモーリスの安ギターには当時の安いオリジナル国産ペグが採用されているのですが、歪んで取り付けられています。くまおさんの持っているW-20やMD-505と同じタイプです。ちなみにコンパウンドで磨いたので輝きを取り戻しています。
前オーナーも色々と苦慮したようで、取り付け穴が複数空いており、更に石膏で埋めたような跡があり汚いです。くまおさんは清掃後再度ペグを設置したのですが、石膏で埋めた穴にネジが効かず、弦を張るとテンションに耐えられず、ペグの裏側が浮いてしまいます。
そこで、ペグを交換することにしました。
せっかくなのでクルーソンタイプのペグでヴィンテージ感を出そうと考えました。ただ安いギターなのであまり高価なペグを付けるつもりはありません。ギブソン純正ペグだと1万円オーバーです。ギターより高いじゃん。
しかし、ゴトー(群馬県の会社で世界的なトップブランド)のSD90というペグが大体4,000円くらいで手に入るので購入しようとしました。ところがサイズを確認してみると合わないんだよね・・・ポールの長さが足りないのです。これでは設置できても弦を巻きつけるのに難儀します。でもギブソン純正やグローバーは高い。そしてよくわからないノーブランドはサイズが不明。書いてない!
そこで見つけたのがキクタニというメーカーのGM-WC2クルーソンタイプペグ。サイズもWH-20にぴったりです。早速Amazonで注文です。
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※このキクタニのクルーソンタイプのペグが普通にAmazonで検索しても出てこないので、探すのに難儀しました。
注文翌日に到着。まじ早いAmazon。恐るべしAmazon。made in taiwanとの事で台湾製。クルーソンのパクリ商品です。品質的には問題なしです。なんだかパクリ商品ばっかりだな・・・。でもバリも特に無くきれいな感じ。
石膏を詰めた後を120番の紙やすりで磨くと・・・ウレタン塗装が傷だらけになりました。まあそんなもんさ。でも裏だから気になる場所ではありません。
ピカールという研磨剤で磨き傷を隠そうかなとチャレンジしましたが傷が深くて消えません。皆様、せいぜい800番位で磨きましょう!それならピカールで傷を消せます。(体験済み)ピカールはヤスリでいうところの大体3000番位のイメージらしいです。
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このキクタニのクルーソンペグは元々モーリスでついていたペグとネジ穴が異なります。その為、下穴を開ける必要があると判断しました。ところがくまおさんの持っているドリルで別の木材に穴を開け、ドリル径を確認したところ、キクタニ付属のネジよりも太いことがわかったので、ガイドを決める目的で1m程度ドリルで穴を開けあとはネジ自体を回しこんで入れることにしまし。
ヘッドの木材って多分MDFのような木粉の圧縮材なんでしょうね。表面だけ突板を貼ってあるのだと思います。
その為、とても柔らかくすんなりネジが入ってゆきました。何回も締緩を繰り返すとネジ穴が馬鹿になると思います。
全体が設置できた写真がこちら。
歪んでますよね(笑)これはネジ穴を隠すためにわざと歪めて設置しました。でも真っ直ぐ付ければよかったと後悔しています(笑)ネジ穴も空いたまま放置しているので、美しくはありませんが、そんなに気にならないかな。本当はネジ穴を爪楊枝で塞いで着色すれば目立たなくなると思いますが、面倒なのでやりません。手間かかかり過ぎ!
付属のブッシュ(表側の金属部品)は穴の大きさが合わなかったので元々ついていたものを再利用します。穴を広げれば入るのですが作業が面倒なの却下です。元のもので十分綺麗なのでなるべくオリジナルを残します。
ペグを変えるだけでだいぶ安定性が増します。比較的安価なペグでしたが全く問題なく使用できました。後で調べたところ、キクタニはギルドの日本総代理店なのね。一定の技術と信頼があります。
実はこのモーリス、磨いた後に一度弦を貼っています。ところがペグが外れかかっている上に6弦がビビるのです。観察するとやたらと弦高が低い。更に観察すると・・・指板が剥がれて浮いてるじゃん!写真だとよくわからないのですが、バインディングが浮いており、指板自体がネックから剥がれ始めています。
安いギターなのでリペアショップへ持ってゆくと購入価格を修理代金が超えてしまいます。そこで、ギターリペアには定評のあるタイトボンドをAmazonで購入。何でもかんでもAmazonで購入するくまおさんです。
きっと探せばホームセンター等に売っていると思いますし、値段も安いかもしれません。でも、探してなかった場合別のホームセンターへゆくのは面倒だし、その時間をかけるくらいなら数百円の製品なのでそれらを検討している時間をなくすのが得策です。さっさとAmazonです。
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隙間にボンドを流し込んで万力で締めます。タイトボンドは木工用のボンドなのですが、日本人に馴染みのあるコニシやセメダインの木工ボンドよりは粘性が低いです。万力はダイソーで買ってきました。木片はホームセンターで詰め放題の端材を購入。
安ギターだからこそ躊躇なく出来ることですね。水性なのではみ出だ部分は乾いた後に、濡らして拭きります。
仕事の関係で処理できなかったので4日間位放置しました。ボンドが奥まで入りいらなかったので不安だったのですがしっかりと接着しているようです。接着剤がネック上で固まっているので濡れたキッチンペーパーで拭きながら掃除します。木工ボンドなのでパリパリ取れます。接着面の細かいバリは800番のヤスリで磨き、ピカールで仕上げた後、フリーダムカスタムギターのポリッシュで磨いたらピカピカになりました。
このポリッシュは本当に有能ですね。小さい割に結構高いな~と感じていたのですが、結果としてはギター数台分に利用しましたがまだ使い切っていないのでコスパはいいです。本当にお勧めです。
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そしてブリッジピンも交換しました。というのも、清掃のためにブリッジピンを外したところ折れて壊れてしまったからです。何でも良かったのですが、Amazonで探して問題のなさそうなものを注文。
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金属製のブリッジピンです。factus ブリッジピンという商品で、真鍮製。特に問題なく装着できました。真鍮だから時間が立つとくすんでくるかも。
ゴールドですが、ハミングバードの派手な感じに意外と似合います。高級感が増した感じです。これ、カッコいいね!
しかし、安ギターなのに結局色々とお金がかかってる・・・。手間も大分かかった〜。
モーリスMD-505と並べてみました。この写真は指板貼付け前のもの。ペグも未交換です。
そして交換後がこちら。かなりカッコいいです。40年の歴史を感じる風格があり堂々としています。弦はマーチンのエクストラライトを貼っています。本来はライトゲージ設定だと思うのですが指が痛くなるのでエクストラライトが好みです。音もシャリンシャリンするので好きです。この辺りは好みの問題ですね。
指板のビビリも概ね治りました。12フレットのオクターブチューニングも概ねオーケー。
ちなみにMD-505は同じモーリスですが、WH-20の方が数年製造年が古いです。ボディ形状はお互いにスクエアショルダーのドレッドノートでほぼ同じ。突板の種類がマホガニーとローズウッドの差があります。(※後に調べたところWH-20とMD-505,W-20はすべてサイド・バックがトーグというローズウッドの代替品だと記載がありました。でもそのわりには木目が全然違うんですよね・・・。wh-20,w-20はマホガニーっぽいし。トーグはフィリピンローズウッドと言われる材料らしいので、MD-505がローズウッドっぽいのは納得です。)
40年前の製品でも十分に現役で使えるってすごいですよね。家電だったら有りえません。ロマンを感じます。
くまおさんのMD-505はマーチンカスタムで自分のバンド名のロゴシールでデカールしてあります。こちらは地元で度々お世話になる中古ショップで購入した安価なギターなので何でもありです。指板のバインディングが剥がれてきた際は瞬間接着剤で貼りました。その後も全く問題なく利用できています。弾きやすくて良くなるんだよね。
並べてみるとハミングバードのチェリーサンバーストってきれいですね。当然のごとく当時の安ギターはウレタン塗装なので、ギブソンポリッシュやフリーダムカスタムギターポリッシュで磨けばピカピカになります。届いた際はホコリを被っていたので、ギブソンポリッシュをキッチンペーパーに付けてゴシゴシ磨きました。ウレタン塗装はお手入れが楽で最高です。高いギターって何かと面倒ですからね。
前オーナーいわく、よく鳴るギターだとのことですが・・・よく分かりません・・・。くまおさんは高級なアコギをほぼ弾いたことがないので判断ができない!でも多分弾いてもわからない!
その後、マーチンやテイラーと弾き比べしたところ、確かに鳴ります。
youtubeで高いギターと安いギターの比較動画が有りますが、ほぼ間違えます。昔、くまおさんはフェンダージャパンのテレキャスターを持っていました。懐かしくなったのでyoutubeで検索すると、日本製をアメリカ製のフェンダーを比較する動画がありました。今回も安い方のギターを選んだくまおさんです(笑)
音の違いは分かるのですが、どちらが良いかと聞かれるとフェンダージャパンの方が好きな音です。と言うか、殆どのギターブラインドテストで安いギターを選んでしまいます。好みの問題だと思うのですが、一般人受けし易いように音色が作られてるのかな?それともくまおさんの耳が貧相なのかな?まあ、ギターの音なんてそんなもんです。
安いアコギはだいたい合板です。合板は接着剤が入っているので鳴らない(音が小さい)と言われますし、長い年月をかけてもギターが育たないなどと言われています。ギターが育つということに対してかなり懐疑的なくまおさんは、その手の話をされるといつも「ホントかよ〜」と疑います。きっとね、世の中の99%の人は合板ギターと単板ギターの差なんてわからないし、興味が無いと思います。
でも人によっては、70年代のギターを見つけてきては、「乾燥していて鳴りが良くなってますね〜」などとしたり顔で言うわけです。
良いギターは最初から良いし、悪いギターは最初から悪いと思います。そんなもんだよ。
その後、制作された年代について調べてみました。
ネット上で過去のカタログをUPしているサイトがあり調べてみると。
1976年のカタログにはWH-30がラインナップされているもののその下位モデルであるWH-20は掲載されていません。
1976年モーリスカタログ
その後1979年のカタログにWH-20が掲載されています。
1979年モーリスカタログ
1980年のカタログではWH-25Sとなっており価格名称の改定がされています。
1980年モーリスカタログ
1977年と1978年のカタログが見当たらないので明確なことは言えないのですが、WH-20は1977(1998)年~1979年の2~3年に製造されたものであると言えるでしょう。ですから2018年現在で約40年のギターという事が判明しました。
ちなみに合板ギターは丈夫だそうです。先日s.yairiのym-02というミニギターを購入したのですが、我が家の1歳児が毎日弾きたがります。本当に毎日です。こちらはマホガニーの合板です。
ガッコンガッコン落としてぶつけて打ち傷だらけの傷だらけです。それでも壊れていませんし穴も開いていません。合板ギターっていいよね(笑)