物理的な距離を縮めると断り難くなる

訪販時代の営業テクニックを少し書きたいと思います。
その前に・・・会社にいると定期的に営業電話がかかってきます。多くはインターネット系や電話回線の営業です。
大抵はくまおさんが電話に出るので、不要だと思えばお断りしています。そして、たまにくまおさんのお父さんが電話に出ることがあります。お父さんは営業マンでは無いので、営業電話を瞬時に営業だと判断する事が出来ません。

営業慣れしている人であれば、声のトーンや喋り方、着信番号で営業電話を判断できるのですが、もともと技術者であるお父さんはその判断が瞬時には出来ない為、営業マンの話を一定時間聞かされることになります。

お父さん
「営業電話っていうのは一方的に話して失礼じゃないか?まず要件を言うべきだろう!」

と言って怒っていました。
そうですね、その言い分は正しいと思います。でもその逆もまた真実で、要件を電話口で最初に言ってしまったら電話を切られてしまいます。ですから電話をする側はトークスクリプトをしっかりと考えて、受け手側が好意的に勘違いしてくれるような言い回しをしてきます。有名な例でいうと「消防署の方から来ました」という言葉です。「方」という言い方でまるで公的機関から訪れたかの様にカモフラージュします。電話営業も考え方は同じです。こればかりは仕方がありません。相手も営利目的の営業ですからね。営業電話を聞いているとNTTと勘違いさせるようにトークスクリプトを組んでいる会社が多いようです。

話を戻して、くまおさんが訪問販売を生業にしていた頃、扉が開いたお客様に一瞬で怪しまれない様にするという高等テクニックがありました。
くまおさんの実施していた訪問販売は太陽光発電システム(客単価400万円)だったので、一戸建てのインターホンを端から順番に押してゆきます。多くの人に怪しまれるので扉の開く確率はあまり高くありません。この時のインターホントークは上に書いた事と同じように「お客様に好意的に勘違いしてもらう」様に設計していました。太陽光発電の場合、「電力会社」or「宅配業者」or「近所の工事関係者」だと勘違いさせるのが常套手段です。

問題は扉が開いた後です。
多くの人は何のことだかよく分からずに扉を開けます。ここで「太陽光発電システムの販売でお邪魔しました!」などと正直に言おうものなら一瞬で「結構です。」と言われ扉が閉ざされます。この時間は1秒にも満たないでしょう。
訪問販売員はその一瞬で「怪しさ」を解消しなければなりません。

色々と経験していると分かってくることがありました。それはお客様は「扉を開けた瞬間」だけはまだ無防備だという事です。そこで、くまおさんは考えました。

「扉が開いて、まだ善悪の判断がついていない瞬間に物理的な距離を縮める」という事です。

具体的にいうと扉が開いた瞬間に相手の懐に入り、可能な限りお客様に近づきます。この距離おおよそ30㎝位でしょうか。注意しなければならないのは、お客様の正面ではなくお客様の横15度くらいの場所に瞬時に移動するという事です。正面に立ってしまうと威圧感を与えてしまい、敵だとみなされてしまいます。そこで、お客様の正面の視界に直接入らない様に瞬時に横に回り込むのです。これで1秒は稼げます。

お客様が警戒態勢に入る前に物理的に懐に入ってしまうとお客様は不思議と抵抗感が薄れます。そして断られる確率が下がります。
お客様が的かどうかを判断する時間を奪ってしまうという事です。これはかなり効果的です。

くまおさんはウォーターサーバー会社で働いていた際には現場経験が合計で10日程度しかありません。少し特殊なルートからのウォーターサーバー事業に関わるようになった為、本来は現場で修行してから本部に上がってくるというルートをショートカットしました。
とは言え、新商品が出た際等には、稀に現場でセールス研修を行う事がありました。その様な際は正直なところウォーターサーバー営業は「簡単」でした。
今迄数百万円の太陽光発電システムを売っていたことに比べれば数千円のウォーターサーバー販売の難易度は雲泥の差です。具体的な訪問販売のテクニックや経験を有していたので、それらのセールス経験で困ったことは特にありませんでした。困ったことといえば「やる気がない」という事くらいです(笑)
訪問販売の十分なテクニックと経験があったので低額商材の販売であればやる気がなくてもテクニックで十分にこなせました。これは他の人から見るとかなり以外な事だったようです。

ちなみに、ウォーターサーバー営業は個別にみると難易度は低いです。しかし、それを「続ける」難易度がとても高いのです。ですから総合的には結構大変な仕事という事になります。くまおさんはその辺りはよく分かっているつもりです。
ですから、結果を出しているウォーターサーバーの現場営業マンは素直にすごいと思っていました。

ただ残念なことに、そこで得た営業スキルは今後のセールス人生にはあまり生きてきません。リテールセールスはビジネス市場ではほぼ評価されないからです。ドンマイ!

という事でウォーターサーバーの訪問営業で悩んでいる人は、とにかく物理的な距離を縮めることを意識してごらん。お客様の警戒心が確実に薄れるので。