好きな仕事と得意な仕事は違う

先日、以前の仕事の後輩と食事をしました。
エンターテインメント系の有名会社に在籍していて活躍しています。そんな彼から「相談したい事がある」と連絡を受けました。

結婚でもするのかな~と、話を聞いていると、会社内で出世したという話でした。そりゃあ良かったね~と雑談しているうちに、話は思わぬ方向へ。

「独立したい」

そうきたか~。くまおさんは社長ではないので独立の先輩ではありませんが、零細企業で自営業の様な立場なので意見が聞きたかったようです。

「おすすめはしないけど、良いんじゃない!?」

と回答しました。彼はまだ若いですし優秀なのでチャレンジしてみればよいと思います。やりたいことがあるというのはそれ自体が素晴らしい事です。

でもお勧めはしないよね。零細企業は会社が赤字になるとたちまち資金繰りが悪化し倒産します。しかも代表取締役が連来保証人なので、自己破産という選択も付いて回ります。

ですから、月次決算を気にしながらクォーター単位で赤字にならない様に、くまおさんは注意します。
ちなみに、くまおさんの義理の父は大手企業を定年退職して悠々自適な生活を送っています。くまおさんの周りには会社経営者が多いのですが、60歳をポイントに考えたときに、まあまあの高確率で困窮しています。困窮していないにしても、経済的には大企業引退組の方が安定していることが多いです。
ちなみに、その彼の父は大手企業関連会社の元社長でセレブです。j上記を踏まえると、確率的には会社勤めをしていた方が穏やかな人生を過ごせると思います。
故に、くまおさんは無責任に人様に起業を薦めることは出来ません。

独立は、「周りが脅かすほど大変ではないけど、自分で考えているよりは大変。」という感じかな?というのがくまおさんの印象です。

よく語られる国税庁の調査で会社存続率のくだりがあります。

・設立1年で60%が倒産・廃業 生存率40%
・設立5年で85%が倒産・廃業 生存率15%
・10年以上存続する会社は6.%
・20年以上存続する会社は0.3%
・30年以上存続する会社は0.025%

その彼も、この数字を持ち出して「大変なのは分かってるつもりです!」みたいな事を言うわけです。でもね・・・この数字ってリアルではないと思うのです。
実際の存続率はもっと高いはずです。

この中には本気で取り組んでいないペーパーカンパニーもあれば、起業リテラシーの全く足りていない社長も含まれています。初期投資が必要な仕事と、原価のかからない仕事では存続率も全く異なります。

その彼の想定している独立分野はノウハウ系で人物本位の事業なので、それらの業界に絞って言えば存続率はずっとずっと高いはずです。基本的に自分の給料分だけ売り上がれば食べてゆけるからです。仕入れや在庫リスクはありません。
統計はこの様な業態の事業も一括りにされた統計数値なので、リアルからは乖離しているはずなのです。

飲みながら話をしている時にちょっと気になる事を言っていました。
「〇〇な仕事がしたいんです!だから独立したら〇〇をやります!」と。

内容は素晴らしいし、とても有意義な仕事だと思います。ただ、くまおさんの予想では理想の仕事を手掛けるもっと手前で、日銭を稼ぐために不本意な仕事に取り組まなければならない時間が相当長いだろうと思っています。その時に「好きな仕事ができない」とか「思っていたのと違う・・・」という事で気持ちが折れるかもしれません。

現実において好きな仕事と得意な仕事が一致する事は稀です。
くまおさんは基本的に営業が好きではありませんが、まあまあ得意です。好きな仕事は建築設計やデザインなどのクリエイティブな仕事です。しかしそれらはライバルが強すぎる上に、儲からないので仕事としてメインでは取り組みません。ですから、くまおさんの本業は「新規開拓営業」です。多くの人はこれが嫌いで尚且つ苦手です。

好きな事を仕事にすると「やりたいこと」というハードルが当然に設定されます。しかし、多くの場合で好きで、やりたい事にはライバルが多く、儲かるまでの戦いが熾烈です。

くまおさんは「比較的得意な事」を仕事にしているので、考え方が異なります。正直なところ売る商品は何でも構いません。ですから、売り方を考える際にまず「ライバルがいないor弱い」「他の人がやりたがらない」「面倒」「カッコ悪い」「大変」な事や場所を探します。そしてそれらから順番に取り組みます。別にその仕事が好きなわけではないので、やりたい事という余計なハードルがありません。お金を稼ぐための仕事ですからね。

その結果、ライバルの少ない場所で戦う事が出来る様になり、利益が出やすくなります。利益が出る仕事は自然と好きになれますので、このやり方で今のところ全く問題ありません。

ですから「仕事は楽しく!」「どうせやる仕事なら気持ちを切り替えて楽しもうよ!」みたいなことを言われると「はぁ?」と思います(笑)くまおさんにやりがいの強要は不要です。

起業というのはギャンブルに近いと思います。結構な確率で負けます。
それが分かっていても挑戦するチャレンジャーはとても貴重な人材です。
そういった友人は大切にしたいと思います。