予備の情報は捨てるべき

仕事が出来ない人は抱えている情報が多すぎる事が原因でミスをすることが多々あります。
「念のために」と言って、多くの情報を収集したり、インプットを試みたりします。ところが、仕事が出来ない人は余計な情報の為にかえって混乱し仕事を2重3重に複雑化してしまいます。

元々キャパシティが少ない人は、余計な情報をインプットしてはいけません。何も考えないでやる為には何を考えればよいのかを常に考え無ければならないのです。

そんな彼らは、仕事が出来ない上に、自分で情報の取捨選択を同時に行わない状況を余計に作り、絶対的仕事量を増やしてしまう為、常に忙しい状況に置かれています。そして、肝心な情報を受け入れるだけの記憶容量が足らないという状況に陥るのです。

そりゃあ、そうです。やらなくてよい仕事まで行っているわけですから忙しいに決まっています。

くまおさんの会社の出来ない営業マンが、こんな事をしています。

ある商品の手配で、電話で注文を受けて、その内容をFAX送信表に書き換え、それをFAXしたあと、電話でFAX到着の確認を行い、相手が不在だったのでかけなおす羽目になり、電話するのを忘れ、しまいにはFAXへの転記が間違っていた為、上記をエンドレスで繰り返すという無能っぷりを発揮していました。

出来ない営業マンは自分がおっちょこちょいであるという事を加味して考えることが出来ません。その為、「転記」という非常にリスキーな事を何度でも行ってしまいます。本人は何度も確認をしているので精度が上がっていると勘違いしていますが、実際には転記ミスが起こるので精度は下がっています。良かれと思って重複保存する度に、情報を間違える為最終的には正しい情報の判別が出来なくなります。

昔、ヤマト運輸のクロノゲートという巨大配送センターへ見学に行ったことがあります。その時にハッとしたことがありました。

ヤマト運輸の担当者
「クロノゲートではほとんど人の手に触れる事無く荷物が仕分けされます。人の手が触れない事により荷物の型崩れリスクが大幅に軽減できます。」

これは目からうろこでした。言われてみればその通りなのですが、一般的な社会人生活では「人の手で真心持って作業される」手作業が、より価値高く扱われます。しかしヤマト運輸では人の手はむしろリスクだと捉えられているのです。

機械の方が正確であると言い切っています。これはその他の業界でも言える事です。くまおさんは建築業に携わっていますが、昔は腕の良い大工さんが重宝されました。それらの大工さんのミノやカンナを使った木材の継ぎ目加工がとても評価されたのです。しかし現在では、現場で木材加工をすることはほとんどなく、前もって工場で「プレカット」されて現場納品されます。コンピューターでの電子制御によって精密加工された木材の継ぎ目の方が、狂いがなく正確なうえに、再現性が高い為、圧倒的に有利になりました。

くまおさんの趣味のギターがありますが、これも同じような業界の流れがあります。昔は腕の良い職人による組み込みや加工が一番だとされ、現在でも高級なカスタムラインは人の手作業によるものがとても重要視されています。しかし一方で、機械化によって、今までは人の手では不可能だった細かい作業が可能になった工程も多数あるようです。機械化する事でより誤差が少なくセッティングできるようになり、メーカーとしてのブランド価値を上昇させたメーカーもあります。

テイラーギターというアメリカの新興メーカー(新興と言っても1974年ですが・・・)は人間の手作業では不可能な精密な加工が求められる工程にコンピューター制御の近代的な加工機械を積極的に取り入れています。それによってギブソンやマーチンなどに見受けられる個体差を極力排除する事で、アコースティックギターのトップメーカーに躍り出ました。

お台場を走るゆりかもめは運転士がいません。運航はコントロールセンターにて行われます。これ即ち、人間よりも機械の方がミスが少ないという事でしょう。

くまおさんの友人で私鉄の運転士がいます。彼には最近子供が生まれたのですが、子供は夜中にお腹が空いて泣きわめきます。その際に、彼が世話をして寝不足のまま運転する事を想像したらぞっとしました。

出来ない営業マンは「手間をかける事」それ自体に価値を置いている為に、本来の目的を見誤っています。

キャパシティが少ないのだから、余計な情報を入れてはいけません。

その情報が余計か、そうでないかの優先順位付け判断をする能力に関してはまた別の機会にお話しします。