ブラック企業Episode9

飛んだ(連絡なく突然来なくなった)人へは当然のごとく給料は支払いません。
月末締め翌月25日払いという給料体系だったので、突然いなくなると翌月の給料が振り込まれないという事態になります。稀に電話をしてくる人がいますが、その場合怖い会社幹部が「取りに来いや~払ったるから。」と言うと誰も取りに来ませんでした。

そんななかくまおさんは順調に出世して部下を7名持っていたのですが、ある時事業部長から指令が下りました。

事業部長
「くまおさんリーダー、ちょっといい?」
くまおさん
「はい、なんでしょうか?」
事業部長
「くまおさんのチームでクビにするやつを2名決めてくれる?」
くまおさん
「??突然そんな・・・みんな家族もありますし・・・言えませんよ・・・」
事業部長
「じゃあ、俺が決めるからいいよ。」
くまおさん
「・・・わかりました。では私が決めて本人に話しますから・・。」

言いましたよ。自分よりも一回り以上年上の家族を持った営業マンに「あなたは今月でクビです」と。
何度も言いますが、くまおさんは新卒で22歳ですからね。
まさかこんなに早く部下に首を宣告する役目を負う事になるとは思ってもみませんでした。

訪問販売の業界では基本的に3か月売り上げがゼロであった場合クビです。
というか、3か月売り上げゼロの場合会社に居ずらくなり、自らやめてゆきます。突然・・・何の連絡もなく・・・電話も通じなくなり・・・。それが訪問販売会社のデフォルトです。

そんな事が毎日のように起こります。
目標値が高いので90%の人は目標未達成です。その為毎日が上司からの激詰めの嵐。

「なんで・・・?」「で、なんで?」「で?」
と部下は上司から詰められます。

上司
「売上足らないよね?大丈夫?」
部下
「・・・大丈夫ではないです・・・。」
上司
「じゃあどうするの?」
部下
「・・・もっと訪問件数を増やします。」
上司
「どうやって?ところでGWはどうするの?仕事終わってないけど。」
部下
「・・・出勤します。」

とまあ、各テーブルでリーダーとアポインターが面談しています。
自分の事をあまり覚えていないのですが、多分くまおさんも同じようにアポインターを詰めていたと思います。本当に毎日です。
現場でも、会社でも、電話でも・・・逃げ場がないのがブラック企業です。

そんな会社でしたが、先輩で光通信出身の人がいました。セールス成績も優秀な人で先輩リーダーでした。
その先輩曰く「ぜんぜん温い」そうです。

さすがブラック企業の帝王光通信ですね。
くまおさんなんてまだまだです。