ハイエンドレプリカギターは偽物ではないか?

誰も言わないのですが、前々から疑問に思っていた事があります。それがGibsonや fender、Martinのヴィンテージギターを精巧に再現して、且つ製作者自身が誇っていて、また専門誌等もそれを称賛している超高級レプリカギターについて。数十万円〜百万円以上する、場合によっては本家製品よりも高額なアレです。何故なら、単純にそれって偽物じゃね?と感じたからです。

制作秘話等では、貴重なヴィンテージを分解して調べたとか、3Dスキャンがどうとか、同じ木材、同じ接着剤だのと、いかに精巧にコピーしたのかを嬉々として語っています。そして有識者や楽器店員などが疑問を持たずに賞賛している流れをよく見かけます。そのコピー製品制作に生涯を捧げている事を大っぴらに話している事も違和感だし、それを疑問を持たずに受け入れている側も謎です。

コリングスとかどうなのよ?どう見てもMartinでしょ?そしてMartinより高いとか意味不昧です。

Gibsonやfender、Martinが自社製品復刻を行う事は理解できます。何しろ自社製品のアーカイブだし、歴史も含めてその会社の資産なので、それを活用する事はごく一般的な話です。とは言え、くまおさんも謎だったのでレプリカかとオマージュ、偽物、コピー品を調べてみました。ところがさらに深みにハマります。何故なら、それらを称賛していた人々が中国製のコピー製品には注意喚起をして、酷評していたからです。それらを紐解くと、中国製のコピー製品は悪意があって、ロゴマークとヘッド形状もコピーし流通させているからという事らしいです。逆に言えば、ロゴマークとヘッド形状が変わればコピー製品ではないという認識であり、これは確かに過去に遡ってGibsonと日本のギターメーカーとの間で法的に答えが出ています。でも、もし自分が逆の立場だったら怒りますよね?

逆にいうとロゴとヘッドだけ違えば偽物作ってもいいの?と思いませんか?その矛盾に気がついているからなのか、少し前にギターマガジンにfenderのコピー製品を掲載してごめんなさいというお詫び記事が載った事がありました。おそらく、いい加減にFender本体からクレームが入ったのでしょう。

また、最近ではGibsonはヘリテージに対して、訴訟を起こしたという記事を見かけました。ヘリテージはGibsonの職人が同じ工場で作っているという事が価値だったりするので、致し方ない気もします。もしかするとハイエンドレプリカは同時期にGibson法務部に訴えられているかもしれませんね。

何故ギター業界は偽物を作ってもあまり糾弾されないのかという疑問が解決されません。そこで同じ様に歴史があって、ブランド価値も高い別の製品を考えてみる事にしました。例えば高級革製品のラグジュアリーブランドのエルメス。こちらを調べてみると…レプリカ品は偽物扱いだし、ヴィンテージエルメスはヴィンテージギターと同様に価格が高騰していますが、それを細部までコピーしましたという会社が大っぴらに存在している事はありませんでした。

もしかすると、業界が違うからかなと思い、少し考え方を見直します。例えばギターは一応電化製品、工業製品だったりする訳で、革製品のように超ローテクという訳ではないから?と考えました。では同じ様に歴史があって且つやや当時のテクノロジーが含まれている工業製品ということで…ロレックスを考えてみましょう。ところがロレックスもエルメスと全く同じで、レプリカ品は偽物扱いです。ロゴマークが無いロレックスもあったりしますが、それはあくまでも偽物。ただしロレックスの意匠は他メーカーもかなりパクっています。例えばサブマリーナ等のダイバーズウォッチはそっくりな物が多いです。しかしそれらを堂々とパクった宣言している会社はありません。

この手の話の反論として、クラシック楽器は全く同じ形で様々なメーカーが作っているとか、自動車は全部4輪だなどという物があります。ただ両方の場合においてもオリジナルを忠実にパクり、自社ブランドを冠して販売していますという会社はないと思います。それにしても、当のGibsonやフFender、Martinが問題視しないなら外野がとやかくいう事ではないと思う反面、法治国家同士のやり取りとしては行儀の良い話ではないなと思ったりもします。

あるギターリペアマンのYoutube動画で、楽器は価格ではない、中価格でも良いギターは沢山ある、そしてそれらメーカーが日の目を見ないで、有名メーカーが持て囃されるのはおかしいという話を見ました。ある種、有名メーカー信望者を揶揄する内容です。

その方は技術者としてその様な話をしているし、部分的に見れば正しいのだけれども、話の中で、ヴィンテージ楽器をよく再現できているとか言っている訳です。ヴィンテージギターを買うくらいなら新品のレプリカで十分だろう的な話です。これは老舗メーカーが作り上げたブランド価値を無視した発言だなと思いました。それこそ技術者だけでなく、当時の営業マンやクレーム担当者などが必死で繋いできたギターの形やブランドであり、あとからひょこっと出てきて、同じものを再現するというのはかなり筋が悪い話です。ギターは工業製品なので著作権や意匠権が認められにくいという事は分かります。だからと言って、その完璧なレプリカ品はやはり偽物ではなないでしょうか。

国産ハイエンドギターも往々にして、Gibson、Fender、Martinをベースとしたデザインです。日本人が再解釈して作り直した製品んだから、それはもう品質は素晴らしいのでしょう。しかし、そこはかとなく漂う偽物感は拭いされず、不思議な事にこの感覚はギターを始めた頃の方が強くて、長年ギター沼に浸かっていると麻痺してきます。こんな事を書いているくまおさんでも、国産ハイエンドギターを弾いてみたいし、どんな物なのか所有してみたいと思っています。きっと素晴らしい製品なのでしょう。

だから、現在熊雄さんが所有しているギターは基本的にオリジナルモデルだけです。Gibson、Fender、Martin、epiphone、リッケンバッカー。あ、モーリスとs.yairiもありました…。

実際、ハイエンドギターを所有した事が無いので手に入れれば考え方がかわるかもしれませんが、やっぱりそれは偽物だと思います。