マッチポンプ営業出来ない人は営業に向いてない

マッチポンプ:自らマッチで火をつけておいて、それを自らポンプで水を掛けて消すと言う意味で 偽善的な自作自演の手法・行為を意味する和製外来語である。

要するに自作自演です。
一般的には「悪いこと」とされており、最も身近な例では携帯電話の「実質ゼロ円」という機種代金のことです。UQモバイルやワイモバイルを見ると分かるように、同じような容量プランでも3大キャリアは6,000〜10,000円位の価格設定に対して、格安スマホは2,000〜3,000円程度です。もともと月額料金が上乗せされており、それを差し引くという名目でスマホ代金が「実質ゼロ円」という見せ方に成功しています。ちなみに格安スマホ否定派の人々の言い分としては、サービスが違うとか通話品質がとか、通信速度が・・・と言いますが、UQモバイルとワイモバイルに関しては3大キャリアと同等です。なぜならそういう建付けだからです。詳しくはここでは割愛します。

キャリアにお勤めの方は、上記の不均衡を当然認識していると思います。既存ユーザーよりMNP優遇のアンバランスもおかしいと感じているはずです。例えばAUに勤めている人はUQに変更しても何ら不便がないことを知っています。ソフトバンクにお勤めの方はYモバイルにMNPすれば得することを知っています。

確かに、その他の格安スマホはお昼や夕時に通信速度が劇的に落ちます。しかし先の2ブランド落ちません。ですから、それらが特別に安いわけではなく、3大キャリアが不当に高いのです。国から電波を借りた実質独占事業なので、度を超えた暴利は許されるものではないと思います。
でも、「実質ゼロ円」という見せ方を考えた人は天才だと思います。多分ソフトバンクです。

営業マンにおいてマッチポンプは必須のスキルです。
商品を売る際には、まず不安を煽って、それを解決できる手段を提示する。そして、その商品の希少性を伝え、今すぐ買わないとなくなってしまうという緊急性を演出します。この様な環境やストーリーを上手に作り上げることが営業マンの腕です。そして、これはどのような商品でも同じです。車でも家でも、機械でも。一般消費財でも旅行でも。全部営業は同じです。どんな商品でもストーリーを作ることは可能です。

よく「うちの業界は特別だ」とか「当社にしか出来ない営業」などと言う人が居ますが、それは勘違いです。基本的な営業の構造はなんでも同じです。上記で示したマッチポンプ方式で売ることになります。極稀に「魅力的な商品力」で売れる商品があります。少し前のiPhoneがそうです。不安からではなく「欲求」として欲しい人が押し寄せました。これは極めて稀な例です。そう、極めて稀な例なのです。例外ですから影響されてはいけません。

会社で営業の仕事につくと先輩や上司が色々と教えてくれます。研修がある会社もあるでしょう。
その時にトップセールスマンのありがたいお言葉がセットになってついてきます。また、売れなくて悩んでいる時に面倒見のよい上司から諭されるように言われる言葉があります。それがこんな言葉です。

「取り扱っている商品に自信を持って、その素晴らしい製品をお客様にどの様に説明するかが大切。営業にとって大切なことはいかに自社製品を愛しているか、自社製品に惚れているかということで、お客様に対して常に正直であることです。」

新人は全くもって反論できない完璧な指導です。ところがその上司は同僚との飲み会でも同じことを言っているでしょうか?答えはNOです。
よ〜く考えてみてください。基本的に「ある商品」にとって「最高商品」と言う称号はひと製品だけのものです。もしも、iPhoneが最高だとしたら、ギャラクシーやエクスペリアは「最高」とは言えません。
あなたがiPhoneを最高だと思っていてアップルの社員であれば、上記のマインドセットは簡単ですが、サムスンの社員だとしたらどうでしょうか?さらに言えば富士通の社員でアローズの担当だったらどうしますか?自身はiPhoneが最高だと思っていてもそれを取り扱うことは出来ないのです。じゃあ、アップルに転職すれば良いということになりますが、そう簡単には入社できませんし、希望の職種に到達する難易度はとても長いと想定できます。ですから、上記のマインドセットは多くの場合で、現実的に「無理」なのです。アローズはスマホ事業を撤退してしまいますので、そういう場合はどうしたら良いの?という話なってしまいます。

最高の製品を扱える、開発している会社は一握りです。多くの場合で何かの問題点があります。ですから、多くの営業マンは必ずしも最高の製品を扱えるとは言えないのです。むしろ最高の製品を扱えない可能性のほうが高いのです。

では、飲み会で上司はどんな会話をしているのでしょうか?

「なんでうちの製品は○○の機能がついてないんだよ〜!!あれじゃあ売れねーよ!」
「サポート部隊がしょっちゅう変わるから、そこがな・・・。」
「機能はいいんだけど、デザインが悪くてさ。」
「ものは一番良いのだけど、価格が高すぎて売りにくい。他社製品だったら半額だよ?おれだったらそっち買うわ。そこまでスペック必要ないもん。」

ね。そういう会話になるんですよ絶対に。そういう会話してますよね?

そうだとすると自社製品を愛して、惚れて、その情熱をお客様に伝えて販売するというアドバイスがいかに無意味かがわかります。ほぼムリゲーなわけです。

確かに自社製品が最高だと思えるならばそれほど素晴らしいことはありません。くまおさんの経験上一点の曇もなくそのように思えたことは生涯で一度も経験がありません。じゃあ、どの様に売るのか?

①「自社製品が最高だと思って、惚れている人が行っている営業を客観的再現する」
②「マッチポンプ営業で、ベストではなくてもベターで十分であると納得させる」

①に関して、愛が滲み出る箇所というのが必ず存在します。これを分析して誰でも再現できる様にマニュアル化します。例えば人間性として、お客様から信頼を得ていたのならば、親近感を演出・再現することが大切です。多くの人は子供時代から知っている人のことを信用します。ですから、お客様の子供時代の話をほじくり返す事が有効です。するとお客様は子供時代を思い出し、今を子供時代の空気と錯覚します。そしてその場に存在している営業マンの事を昔から知っている人のように感じるのです。これにより、信頼関係醸成の時間を大幅に短縮できます。くまおさんは実体験済みですが、かなり時間短縮になります。

②に関しては冒頭に述べたとおり、危機感を煽り解決策同時に提案して決断出させる方法です。ハリウッド映画で「細菌兵器」と「ワクチン」がセットで語られるのはその為です。細菌で恐怖を煽り、ワクチンを差し出すとよく売れるのです。

前職で代理店募集の担当をしていた際に、くまおさんは自社製品が最高だとは思っていませんでしたし、惚れてもいませんでした。
しばらくは自宅ですら使用していませんでした。でもね・・・売れますよ。別に。

お客様から聞かれることがあります。

お客様
「くまおさんは使っているのですか?」
くまおさん
「いいえ。使っていません。でも、あなたにはとても役に立つ製品です。」

堂々と言えばそれで終わりです。なんら問題ありません。
こんなことも言われました。

お客様
「もしあなたが私の立場だったら、ウォーターサーバービジネスに参入しますか?」
くまおさん
「いいえ。参入しません。なぜなら小銭商売で面倒だからです。ただし、安定します。ですから安定を求めたいという御社の考え方には合致します。しかし私の考え方とは違うので私がオーナーだったら参入しません。でもあなたにとっては良い事業だと思いますよ♫」

別にこの回答で全く問題ありませんでした。
くまおさんにとっての最良とお客様の最良が一致するとは限りません。そんな事は当たり前の話です。

コンサル営業をしている時にこんな事を言われたことがありました。

社長
「そんなにうまくゆくというならあなたがやればいいじゃない?なんでやらないの?」
くまおさん※間髪入れずに
「何言ってるんですか、社長。コンサルのほうが儲かるのですから、やらないに決まってるじゃないですか(笑)」

多くの人は、そういう話を避けたがります。お客様の喜びが・・・相手の笑顔が生きがいで・・・などという見え透いた嘘をつく羽目になり、信頼を失います。

代理店募集の仕事をしている際に、参入を検討している社長と必ず行うやり取りがありました。

くまおさん
「なぜ、新規事業への参入を検討しているのですか?」
社長
「これからはウォーターサーバーが伸びると思うし、お客様ウケも良さそうだ。自社ルートを活用すれば顧客開拓も容易だと思う。」
くまおさん
「こんな事を私が言うのもおかしいのですが、新規事業がうまくゆく確率は低いです。ウォーターサーバー事業に参入する労力を本業にかけてはいかがですか?」
社長
「いや、新しい収益の柱として・・・云々・・・。」
くまおさん
「なぜ本業でベストを尽くさないのですか?資本を本業に投下しないのですか?」
社長
「いや・・・ベストは尽くしているさ。しかし業界の見通しも良くないし・・・」
くまおさん
「では、本業に労力を割いても伸びる可能性があまりないということですか?」
社長
「・・・難しいかもしれないね・・・。」
くまおさん
「・・・なるほど。でも新規事業の方が一般的には更に確率が低いと思いますよ?それよりも低いと?」
社長
「うちには既存顧客がある!○○もあるし、○○のルートで売れるかもしれない。それに、○○の紹介も期待できるんだ。」
くまおさん
「では、本業の見通しが悪いので新規事業を検討したいわけですね?それならばお役に立てるかもしれません。」

とこんな感じで話に入る前に危機感を煽ります。
相手の社長から「本業の調子が悪い」と必ず言わせるように誘導していました。それを言わせることによって立場が変わるからです。くまおさんが上位に立ち会話をコントロール出来るようになります。また、本業の調子が良い会社の社長は新規事業には見向きしません。なぜなら自社の本業に集中したほうが儲かるし、面白いからです。

ですから新規事業参入を検討している中小企業の業績は大体悪いですし、斜陽産業です。

危機感を煽って、十分に認識した後に、ウォーターサーバー代理店事業というアメを差し出します。
必ずしもウォーターサーバー事業がベストとは言えないかもしれないけれども、十分にベターであると納得させるのです。そして、エリア性であったりブルーオーシャンであったりといった言葉で緊急性を煽ります。

これらのマッチポンプ営業は基本中の基本です。ただ、あまりに優しすぎる人はこの様な駆け引きが出来ません。
くまおさんの部下でもこれらのやり方を理解できない人が少なからず居ました。良いか悪いかは別にして、そのような人は残念ながら成績が伸びず去ってゆきました。

ちなみに、くまおさんはこんな殿様営業方法はたくさん試してきました。とても貴重な体験であり、様々な効果測定は反応を見ることが出来ました。その結果として感じたことは「営業はどんな商品でも一緒」と言うことです。商品が異なるだけで顧客がたどる流れはすべて同じです。そして、テクニックさえ手に入れてしまえば、殿様営業の方が精神的に楽であると分かりました。これらは代理店募集事業の際に様々な実験を出来たからこそ身についたりわかったりした事です。とても貴重なビジネス経験でした。