「マニュアル」という言葉を悪い方向に勘違いしている人に読んでほしい

マニュアル:ある条件に対応する方法を知らない者(初心者)に対して示し、教えるために標準化・体系化して作られた文書である。
※ウィキペディアより

マニュアル人間という言葉には悪い意味・印象が溢れかえっています。それこそ至る所で大洪水を起こしそうなくらい溢れかえっています。
一度マニュアル人間というレッテルを貼られると当人の能力が低いと多くの人に判断されます。
これには言われたことしかできない指示待ち人間という意味も含まれるようです。

兼ねてから公言していますが、くまおさんはマニュアル超肯定派です。
その理由を説明します。

その前に、現在多くの人が抱いているイメージを推測してみます。
現実社会ではマニュアルを守らされる側に属している人が圧倒的多数なので、「マニュアル」=「嫌々守らされるルール」というイメージを持ってしまう事が一般的です。これは仕方のないことだと思います。

ところが、実は他にもマニュアルをとても嫌う層があります。それが「中小零細企業の社長」です。彼らはかなりの確率でマニュアルと言う言葉が嫌いです。くまおさんは仕事柄多くの経営者の方と合ってきましたが多分8割くらいの中小零細企業の社長がマニュアルと言う言葉に対して、上記で示したような「指示待ち人間」「能力が低い」「自分で考えない」というイメージを持っていました。

むしろ嫌いであるということがマニュアル化しているのでは?と思うくらいです。

さて、ではくまおさんはなぜマニュアル肯定派なのでしょうか?

この話をする為にはマニュアルとはそもそも何なのか?ということに触れる必要があります。
マニュアルとはあるゴールに向かって進む際に、道標となる教科書です。あらかじめ予想される問題を前もって提示し、概ね活動内容を決定するものです。

だいたいこんな感じでしょうか?
ただ、実はこの説明だけではその言葉に隠された裏側の意味を読み取る事ができません。

何か事を成したいと思ったとき、殆どのことは失敗に終わります。しかし稀に成功するケースがあり、それを体系化した物がマニュアルです。成功した方法をルール化して「やることを決める」ことがマニュアルの定義の一つです。
ところがこれを逆に読み解くと「やらなくていいことを決めている」という側面もあるのです。事を成す場合、やり方は無限に存在します。そしてその殆どが失敗します。
そう、不都合な真実なのであまり面と向かっては言われませんが、殆どのチャレンジは失敗に終わります。

マニュアルが定義されていればその「やらなくていいこと」をやる必要がなくなります。

これすなわち、マニュアルとは実は「無限に存在するやらなくて良いこと」を決めることなのです。
「やることを決める」のではなくやらないことを決めるのです。
マニュアルがあればいちいち考える必要がありません。その為スピードや精度が上がり、熟練度も上がります。
一方マニュアルがない場合は、毎回違う方法に寄り道する必要があり、時間と精度が安定しません。このような話をすると「その試行錯誤が上昇を生む」みたいなことを言う人がいますが、そういった試行錯誤は一部の人々が考えれば良いので、みんなで考える必要はありませんし、「みんな」という得体の知れない存在から画期的なアイデアが生まれることは皆無です。それは薄々みんな気がついていることです。
さらに言えば、マニュアルにはめ込んでも考える人材は勝手に考えるので、試行錯誤させる必要はありません。放っておいても大丈夫です。勝手に這い上がってきます。

これもくまおさんが昔から言っていますが「育つやつは勝手に育つ」です。
人を育てるなんておこがましい。成長する人材は勝手に成長してゆきます。逆に、育たない人材は何をしても育ちません。かえらない卵はかえらない。無精卵はいくら温めても孵化しない。

さて、話がそれてしまったのでもとに戻します。

これと関連して、フランチャイズというビジネスモデルに対しても誤解を持っている経営者がとても多いです。
くまおさんはウォーターサーバー会社のフランチャイズ本部で加盟店募集の仕事をしていたのですが、殆どの経営者が勘違いしていたので、ほぼ毎回下記のように伝えていました。

「フランチャイズに加盟金を払うというのは、成功を買うということではありません。”失敗”にお金を払うということです。」

成功の方法は様々あります。しかし、実は失敗するパターンはかなりの確率で似通っています。良いフランチャイズ本部は本部自身が直営店でさんざん失敗を繰り返し、その失敗を避けるようにマニュアルを作ります。本部の豊富な資金力を使い先に失敗を経験してくれているのです。加盟店は「わざわざ通る必要のない失敗」を経験しないで済むのです。

ですから、「俺のほうが優れたアイデアを持っている。俺がマニュアルを作ったほうが良いものができる。だからフランチャイズの加盟金は高すぎる。」みたいな事を言う経営者はそもそも論点がずれているのです。

ということで、これがマニュアルの力です。
マニュアルでは「やること」をルール化する事ばかりに目を奪われがちですが、じつは違うのです。「やらなくてよいこと」を決めるのがマニュアル化なのです。
やることが決まっているというのは、それ以外のことを「やらなくてよい」ということです。

でね、こういった話を繰り返し伝えても伝わらない層があります。
それが「中小零細企業の社長」です(笑)