
くまおさん、太陽光発電システムを売る
以前に勤めていた会社の社長から連絡があり、短期的にお手伝いすることになりました。
勤めていたと言っても、スターティングメンバーだったので何もないところから、社長と先輩1名とくまおさんの3人で始めた会社でした。とは言え、くまおさんと先輩は出資していなかったので経営には口出しが出来ず最終的にはお別れしました。この時、会社をやるなら出資しなければ意味がないと強く心に刻みました。
一応くまおさんは円満退社したので、その後も定期的に社長と連絡を取り食事に行ったりする間柄で良好な関係を保っています。
この会社では家庭用太陽光発電システムを販売しています。
くまおさんが働いていた当時は大凡の客単価が440万円位で、それを訪問販売で売っていました。まだ東日本大震災前だったので業界に好景気の波は押し寄せておらず、興味のある先進者が買ってくれるという代物でした。
ゼンリンの住宅地図を片手に、一軒一軒インターホンを押してアポイントを取り後日訪問し即決営業を取るという仕事です。かなり狂気じみた仕事だな〜と思うのですが当時はそれしか知らなかったので当然だと思って仕事をしていました。
でね、その社長からこんな電話があったわけです。
※クローザー=クロージングをかける人
※クロージング=客先で営業をかけること
社長
「くまおさん!アルバイトしない?」
くまおさん
「クローザーやれって話ですか?」
社長
「さすがくまおさん!察しが良いな!その通り。」
くまおさん
「条件は?」
社長
「契約金額の3%を支払う。アポイントこちらで用意するので、客先でクロージングをかけて契約を取ってきてほしい。フルコミッションで。」
くまおさん
「まあ時間はありますが・・・もう業界を離れて十数年経ちますからね・・・」
社長
「少し勉強すれば思い出すさ。」
くまおさん
「・・・わかりました。詳細を聞かせてください。」
という事でやってみることにしました。この手の仕事で一番大変なのでアポ取りです。そのアポ取りに関しては業務提携先からある程度送客されるのでクロージングに専念してくれれば問題ないというのが決断の要因です。
その他の理由として、くまおさんが太陽光発電システムを売っていた時は400万円以上だったシステムが現在では半額の200万円程度まで値下がりしていた事も要因でした。
くまおさんの算段としては、1日3件訪問するとして、契約率30%と仮定して1日稼働で1契約。客単価200万円で6万円の日当になると言うものです。くまおさんは長らく法人セールスしか行っていなかったので、久しぶりに個人相手に営業して実力を試してみたいという思いもありました。
結果から言うと4日稼働して2件契約を獲得し20万円弱の報酬を得ました。残念ながら1日6万円という想定は下回ってしまいました。
厳密に言うと7件のアポイントに行き、そのうちまともに営業できたのが3件で、その中で2件の契約を取りました。客単価は300万円オーバーだったので最低ラインはクリアできたかな?という所です。
アポイントが緩く玄関先での提案や、寒い夜に駐車場で話をする羽目になるアポイントもありました。しかし・・・報酬はまあまあの仕事だったものの、初日が終わった段階で社長にこう伝えました。
くまおさん
「明日は出ますが、それでお終いにします。想定よりもアポイントの質が悪く客先に上がり込めません。」
社長
「そこをなんとか、お願いできないかな?」
くまおさん
「無理っす。アポイントの質が悪いです。アポイントを取得することが大変なのは承知しているつもりなので、そのアポイント自体を狭めるような事は言えません。それを織り込んだ上でこのアポ質だと30%の契約率が望めません。顧客と対話できれば最低でも30%は契約できると思いますが、対話比率が低いので割に合いません。」
社長
「・・・・そこをなんとか。」
くまおさん
「無理っす!」
なんだかんだで残務処理があったので結局4日稼働することになりました。
契約手続き後にお客様には
「私の仕事はここまでなので、これ以降は事務方と工事担当が責任を持ってお客様対応します。」
と言って手離れがよいように処理して完了です。
正直なところ10年以上前に習得した太陽光発電システムの知識はほぼリセットされており、再度入れ直しでした。
分からないことや忘れたことだらけです。しかし営業スキル自体が当時よりもかなり向上していたため、それの差を補って余りあるものでした。知識は足りなかったもののお客様からの質問として想定されるものは大体わかったので前もって確認することで解決出来たと言うこともあります。
久し振りに個人向けの営業でしたが、当時は勘で行っていたセールスを現在では理論を認識した上で実行出来たということも有りとても有意義だったと感じています。
やはり、営業の基本は同じですね。
理論をしっかりと勉強して、実践で身に着けていれば大体ものもは売れるなと再確認できましたし、当時と比べて楽に契約まで運べた認識があるのでスキル自体が向上したと実感できました。
くまおさんは本番セールスに入る前に、支店の営業責任者に同行させてもらいました。
そのセールス手法を見て正直なところ「レベルが低いし、押しも弱いな」と感じたので、くまおさんのスキル自体が大分向上していたのでしょうね。ちなみにこの会社の社長は天才的なセールスマンなのでくまおさんでは敵いません。
でも、よかった。くまおさんの営業スキルが十二分に通用することを証明できたので。
何を話して契約してきたかというと・・・太陽光発電システムについてはさらっとしか話をせず、お客様のホットポイントを見つけてそこを突き続けました。どんな商品でも同じですが、お客様が欲しいのはその商品自体ではなく、その商品によってもたらされる恩恵です。本来手に入るであろう恩恵をみすみす逃したと思わせるようなトークができればOKです。人は得られたはずのものを得られなかったり、現状維持が危機にさらされること本能的に嫌います。ですから、そこを刺激すれば良いのです。快楽の取得よりも、不満から逃れたい欲求がより強烈に作用します。
今回思った事として、エンドユーザー営業はやっぱりキツイ。精神的にキツイし常に新規開拓をしなければならないというプレッシャーには二度と晒されたくないと再確認しました。
くまおさんは、太陽光発電システムの業界にはもう2度と就職することは無いと思うよ。でもまあ面白かったです。
※コミッションがもっと高かったらフルコミッションでやるなら良いかもね。